マリオネットのウサギさんができるまで
こんにちは。
今日はマリオネットのウサギさんが誕生するまでの制作話です。
今回の6体制の中でも一番難しかったです。
「マリオネットとかできますか…?」という旨の話をいただいて、
「で、(えっマリオネット…?)
で、(ダブルピンジョイントならなんとかなるかな…)
できます(*^▽^*)(たぶん…)」
(*^▽^*).;:…(*^▽…:.;::..(*^;::: .:.;: …
とりあえずすぐにラフを描きました。
×=ジョイント部分
○=紐で吊る位置
△=紐で吊ってもいいかなと思った位置
区切り線はパーツ分けです。
こんな感じで球体関節風に関節を増やして(肘ボールと膝ボール的な)
動きをよくしたほうがいいかな~とか考えていました。
・ナチュラル
・アンティーク
・細身の野ウサギ
・生き物というよりもぬいぐるみ
というご依頼だったので、この辺のナチュラルベージュなお色を使うことにしました。
いつも通りのパンツスタイル。
パンツ側は数年前に染めてくたっとなったシルクです。
以前配信で、「染めると(少なくとも)生地が傷むからあんまりやらないんだ〜」
みたいなこと言ってましたが、逆にアンティーク風にしたいときには良いですね。
実際に型紙を起こしていきます。
まず大きさの基準を決めるために頭から作ります。瞳とかお顔づくりは最後に。
耳にも動きを出したかったので、頭の綿詰め前に耳が付くであろう位置を予想してジョイントを仕込んでおきます。
いつもあと付けなので滅多にやらないことです(下手したら事故っちゃう)
サイズは大きめの50cm程度ということで、ピンクウサギさんより3周り大きいです。
型紙はピンクウサギさんのアレンジ型になります。
ピンクウサギさん
頭の綿詰め後は足を作ります。
まずつま先と太ももパーツを先に制作。
その間に入る膝ボールは後回しで、むしろ全体の足の長さはそこで調整しようかと思いました。
木毛。これで1kg
今回は全身中身に木毛(もくもう/かんな削りのめっちゃ細いやつ)を詰めます。
詰めにくいしムラもできますが、普段使っている綿よりも軽いです。
元々は化繊綿がなかった時代にこういった木毛やおがくずが使われていました。(1950年あたりのアンティークシュタイフなど)
アンティークスタイルもですが最後に吊ることを考えると重くてはダメなので、木毛はピッタリです。
今回使っているのは香り重視でヒノキですが、
松の方が粘りが弱くてパリパリなので詰め物はそっちのほうがいいんじゃないかな~と思います(体感ですが…)
足のつま先部分です。
毛が奔放で分け目ができちゃってます。
普段ならアイロンで毛並みを直すところですが、今回はやりません。
アンティーク風というと汚れが激しいイメージですが、同時にいい意味でのラフさ(バサバサ感?)も大事だと思っています。
断面にあたる箇所にはダブルピンジョイントを仕込みます。(後で膝ボールと接続)
先に太ももパーツを胴体に接続して、それから膝ボールの大きさと角度を決める作業。
黄色いポンポンがあったので置いてみるとそれっぽいです。
しかし膝ボールの中にもジョイント(しかも2か所/つま先側と太もも側)を仕込まないといけないので、大きさはこれよりも大きくなりますね。
あと鮮やかな色は今回はナシ。
ウサも見守っているよ。
膝ボールを作ってつま先と太ももに接続。
その後、膝ボールにも木毛を詰めて同様に閉じます。
これで足は完了です。
同じ要領で腕も3パーツに分けて2セット制作、胴体へ接続しました。
すっとばしてすみません。
中々良い座り感です。
耳と尻尾も制作して接続。
全てのパーツを作り終えたら最後に胴体を詰めて閉じます。
最後にお顔を作って、爪の刺繍をして、やっと誕生です。
瞳はウサギらしく深めの赤で(オレンジやクリアと迷いました。)
わかりにくいですがメタリックでキラッと光ります。
本物のアンティークアイも持っていたのですが、表情が怖くなりすぎるのでやめました。
「お~い 起こしてくれぃ」
膝ボールとか肘ボールとか新しいバランスだったけど、ここまではいつも通り。
これからマリオネットの操作コントローラーである手板を作っていきます。
こっからこっから!
なんせプニコはマリオネットを数年前に遠巻きに1回しか見たことがないし、
見たら見たでお人形の方に目が行って(そりゃそうじゃ)手板なんて見てな~い。
操作したことがないし、どういう仕組みで動いてるのかすらわかりません。
手板といっても色々な形のものがあるようなのですが、紐とどう連動しているのかが謎すぎちゃって。
ここからが本当の地獄だ…
(*^▽^*).;:…(*^▽…:.;::..(*^;::: .:.;: ..
とりあえず先にラフ画通りに人形側に紐を付けて、動きを見ます。
それを偶然にも買ってあったトースターの網(新品)に結んで、紐の位置関係を把握することにしました。
吊る箇所は両手、両足、頭頂部、両耳、尻尾で8か所。
真上に括り付けてみると、よく見る”×型”の手板ではなく、”キ型”の手板の形に近いとわかりました。
×型は人などの手足のみ(4か所)の場合で、羽や尻尾のある動物系は大抵”キ型”(6か所)なのですね。
そういうことだったのか…
どのパーツとどのパーツを連動させるのかは、
網(手板)や人形側のどこに紐を括り付けるかによって変わります。
(クロスさせる、前めにつける、後ろめに付ける…等)
更にそれぞれの紐の長さのバランスも関係してきます。
↑(動画)▶︎をクリックしてね
えいえいお~
これは紐を直接引っ張っています。
滑らかな動きになりますね。
映像ではいいですがリアルでこれは厳しいです。両手が塞がるし…
この状態で持ち上げてみる。
内股すぎる。膝関節がいまいちなようです。
あくまで球体関節”風”ですからね…膝が曲がるわけではありません。
実際にはすべてのパーツがプラプラしている状態です。
↑(動画)▶︎をクリックしてね
ムズいな〜
じわじわくる
そんな顔しないで………
↑(動画)▶︎をクリックしてね
こんな感じで板の角度で動くようにすればいいんだなと確認しています。
これ以上睨めっこしていても仕方がないので、実際に作ってみます。
まずは手板を基準点にして、後で紐の長さで調整する方向で。
偶然にも持っていたノコギリで3パーツに切り分けます。
偶然にも持っていたピンバイスで穴をあけます。
まずは頭頂部を吊る部分と、木同士の連結穴だけ開けておきます。
※このとき貫通して机にも穴が開きます(なぜなのか…)
偶然にも持っていた紙やすりで面取りと角を丸くをします。
粗目の100番です。木工は粉がすごいですね…
もともとスベスベしている木だったので、表面はやってません。
こんな感じ。
ごめん!この先の画像がない!!!!!
マスキングテープで仮止め→位置把握→穴あけ→紐の長さ調整
ってのを何度も各パーツ繰り返して作りました。
両手が塞がっちゃって、写真が…。
よ~やく完成。
ジョイントは頭、両耳、両手、両手関節、両足、両足関節、尻尾の16ジョイント。最多ですね。
全てダブルピンジョイントでプラプラします(取れそうだけど取れないよ)
むしろダブルピンは普通のジョイントよりも耐久性がありますからピッタリです。
反面、プラプラしすぎて操作が難しくなっちゃったかな。
手板。デカいよ!!本体もデカいけど…
しかし今回は写真小物としてだったのでむしろ好まれました。ありがとうございます…。
こうしてみるとシンプルできっとひどいものですが難しかったです。
手の位置は迷ったのでサブ穴があって、こっちにつけると常にバンザイポーズになります。
複数穴を開けておいて、状況に応じて紐を結びかえることもできそうですね。
人形サイズが全長75cm、つま先から手板までは100cm。
重さは手板含めて600gと大きさの割には軽いです。
ほとんどジョイントの重さかな?
↑(動画)▶︎をクリックしてね
動かすとこんな感じ。
足は関節じゃなくてつま先部分に紐を吊りました。
手板の仕様書(?)です。紐の長さも書いてあります。
人形の形や大きさが変われば、手板の種類・サイズや紐の長さも変わってしまいます。
なので本当にこれ用ですね。
そもそもマリオネットは人形に型を使用しない(木彫りなど)もあるので、その場その場で合わせて作るって感じなのかなぁ。
でも一応の記録用ですね…もしかしたらまた作るかもしれないから…型紙と一緒に保管しておきます。
ディスプレイに木毛を置いたら、ナチュラルでいい感じ。
作ってみてわかったことは、
紐のつけ位置や長さ・手板を必ずしも左右対称にする必要がないということでした。
むしろ左右非対称にすることでズレが生じて、それが動きへ繋がります。
手板の形だってきっと正解はないし、自由度が高いですね。
単に動かすだけならラフな感じでもなんとかなりそうです。
逆に手板の操作のみで動きを完璧にコントロールする場合(例えば複雑な人形劇など)は、全てを完璧にする必要がありそうですが…。
最近は左右対称や個体差についてよく考えていたので、
普段滅多にやらないアンティークスタイルと相まって、そこが印象深い制作となりました。
足はpicoちゃんみたいな感じ。
肉球部分はピンクウサギさんの耳にも使っていた手染めシルクで合わせました。
過去2番目くらいに難しかったです(手板が)
マリオネット職人さんは手板も一緒に作っているのですか?それは狂人すぎませんか?
なんて奥の深い世界なんだ…。
今回は見様見真似で基本的な形の手板でしたが、もっともっと複雑な手板もあるようで、本当にすごすぎます…。
みんなもどこかでマリオネットを見る機会があったら、褒めて褒めて褒めちぎりましょう!!!!!!!
↓(動画)▶︎をクリックしてね
オクラホマミキサーで踊らせてみた
※音が出ます
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